全国各地のラーメンの名店が集う新横浜ラーメン博物館。連日、観光客や若者らで人気の施設だ。しかし、入場するだけで300円とられるこの施設、ラーメン代と合わせると1000円以上に。長時間、並ばされてラーメン一杯にそれだけの出費は高いと思わないだろうか。
そこで、ヒマ新聞の首都圏担当記者が、新横浜ラーメン博物館へ出向いてラーメンを食べずに、入場料の300円にどれだけの価値があるかを検証した。 私が、ラーメン博物館に行ったのは、あいにくの冷たい雨となった日。しかし日曜日とあって、ラーメン博物館の中は湯気や客の熱気で充満していることだろう。300円を支払い入場券を握りしめ、ゲートをくぐった。 混雑している日を狙ったのは、300円の価値をより厳しく検証するためだ。長い待ち時間、身動きの取りにくい通路。今回は、そういった過酷な条件下で施設を利用して検証する。加えて、ラーメンの味に価値判断が左右されないよう、「ラーメンは食べない」というルールを決めた。これによって、300円の入場料そのものの価値を冷静に判断できるというわけだ。 地下1階から地下2階を見下ろす。各店の前には、迷路のようにロープが張り巡らされ、そこにぎっしりと人が行列を作っている。この施設では、並ぶという行為は必須だ。待つことも楽しいということなのだろうか。 待つことを楽しめるかどうか、検証するため行列に並ぶことにした。選んだのは「支那そばや」。もちろん、並んでも食べない。待ち時間はおよそ40分。 前で待っているカップルが、いちゃいちゃしながら、きのう食べたカレーライスの味について語っている。「ラーメン屋でカレーの話をしなくてもいいだろう」などと考えながらひたすら待つ。これだけ待てば、どんな物を食べたって美味しく感じるんじゃないだろうか。食べないが。 およそ30分で券売機の前まで来た。1日100食限定の塩ラーメンがまだ残っている。とても食べたい。でも、食べない。我慢して、ここで行列から抜けることにする。 店の前で、ラーメンの鬼、佐野実がにらんでいる。「あんたのラーメン食べたかったよ。今度来たときは絶対食うからな」と誓って店を離れる。入場料の300円でできるだけ楽しむつもりだったのだが、今のところは苦痛しか感じられない。 和歌山の名店、井出商店から満足げに出てきた女性客。かなり上機嫌だった。それに反比例するかのように私は不機嫌だった。 井出商店の前を通り過ぎると駄菓子屋を発見した。もやもやした気持ちを吹き飛ばすため、車掌さんが売っていたくじ引きを、50円払ってやってみることにする。アクセサリーくじ、ピストルくじなどの中からスーパーボールくじを選んだ。 当たったスーパーボールはなんとマーブル!少し嬉しくなった。 続いて1階に戻り、自分だけのカップヌードルを作る事にする。容器を300円で買って「哀愁味」と書き込んだ。行列に並んで、麺を入れ、スープと具(ノーマルスープにチーズ、豚肉、オニオンチップ、ハート型かまぼこ)を選んだ。 愛想良く、てきぱきと注文を受け付ける店員。スープと具の組み合わせは、5460通りにも達する。そのうちの何通りをこの店員は手がけたのだろうか。 完成したマイヌードルは袋に梱包して、なくさないよう肩から斜めがけにした。無性にラーメンが食べたくなっている私にとっては宝のヌードル。 そして、1階の土産屋へ。そこで私は、思わぬ物と対面することになる。 みそラーメンを初めて作った札幌の「味の三平」の土産ラーメン。発見してしまった。札幌で一度、食べたことのあるその味がよみがえってきた。アドレナリンが放出される。「ラーメンが食べたい」。私の足は、もう一度、地下のラーメン街へと知らず知らずのうちに向かっていた。見えない手に導かれるように。 気づくと私はコロッケを手に取っていた。みそ味ラーメンコロッケ(150円)。地下の売店でいつの間にか買っていたようだ。これはラーメンじゃない。断じてラーメンじゃない。そういいきかせて食べる。 続けて、揚げパンとミルメーク(ココア味)&メロンアイスも購入して食べた。うまい。何か間違えているような気はするがうまい。ビールにも心が惹かれたが、入場料の検証を正常にできなくなっては困るのでビールは断念した。 一息つくと、どうやら腹が満たされて元気が出てきたようだ。 元気になったので、もう一度、行列に並ぶことにした。食べないが、はしご気分を味わうためだ。ラーメン博物館の各店は、はしご客用にミニラーメンも置いている。 並んだのは、山形赤湯からみそラーメン「龍上海」。創業47年の名店が、初めて封印を破り地元以外で出店したという大ブレーク中の店。食べないものの、その能書きで1時間待ちも何のそのという気分。 思ったより早く、40分ほどで券売機の前に到着した。しかし、この店の行列はトイレの前を通るので、においが苦痛だった。苦痛しか感じていないのだが、食べないと決めているので、ここで列を離れることにする。 列から出るときに、後ろの人が「いいんですか?」と聞いてきた。「いいんです。理由は聞かないでください」。そう言って、きびすを返し出口へ向かう階段を上った。 結局の所、300円の入場料だけでは苦痛しか感じることはできなかった。そして苦痛を補うために、くじやコロッケ、揚げパンなどで最終的にラーメン代に匹敵する金額を使ってしまった。これは思わぬ誤算だったとしか言うほかはない。 悔しいので、作ったマイヌードルではなく、高いカップ麺を買ってきて食べた。 具と、スープ、麺などそれぞれヤフーのネット投票で1位を獲得したものを混ぜ合わせたラーメン。どちらかというとまずかった。ラーメンは、うまい物を混ぜればうまくなると言う単純な食べ物ではないのだろう。 ラーメン博物館では、ラーメンを食え。当たり前の言葉が、佐野実の顔とともに脳裏に浮かんだ。
by himanews
| 2006-02-27 01:04
| 敏腕記者の体験レポ
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